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経験専門家の成長日誌「あしあと」#22「一緒に観る」

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#22「一緒に観る」

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目次
1.日々の楽しみ
2.承認
3.安全基地
4.さいごに

 

〇日々の楽しみ

 

ひきこもっていた頃、毎日のようにやっていたのが「好きな昔のアニメを一日一話ずつ観る」ということでした。
アニメでも、ドラマでも、ああいうのはいいものです。
だって、「明日になればちゃんと次の話が始まってくれる」のですから。
決まりきった形で。

ん?と思う方も、そうだよねという方もいるかもしれません。
日頃働いているからか、いまは随分こういう感覚もなくなったけれど、当時を回想すると、このことがよく思い出されます。

 

とにかく、私は不安だったのです。
決まった形もよりどころもない、漠然とした不安が付きまとうひきこもりの日々。
そこにわずかながらでも「形」を授けてくれたのが、アニメでした。
「ちゃんと次の話がある」こと。
その安心と楽しみは強かったと感じます。
いまから思い出しても、アニメはあの頃の自分にとって大きかったな…と。

そして、ここで僕が同じくらい大切だったなと感じるのが、母の存在です。
二人暮らしで、話すことも多かった母。
そうやってアニメを見る時、母のその対応に、私は気づかぬうちに救われていたような気がするのです。
もちろんそれが全てではないけれど、「元気をもらうきっかけ」になっていたのではないかと。

 

今回は、そんな昔話も含めつつ、「親子」の話を出来ればいいなと思います。
そして、ここから数回分は、親子問題について考えていこうとも思っています。
その第一弾!よろしくお願いします~。

 

〇承認

 

さて、先程書いた通り、わたしはアニメを一日一話ずつ観るというのを習慣としていました。
それは、一日の中で最も心穏やかに、楽しんでいられる時間のひとつでもありました。tv_girl_tooku.png

特に好きだったのが、少女漫画/アニメ。
具体名は伏せますが、概ね、女性がその中心視聴層であるような作品が、私は大好きでした。
それを、自分の部屋でひとりで観ることもあれば、リビングの母のいる場で観ることもあったのです。

 

ここで出て来る問題は、三つあります。
①    ろくに外にも出ないでアニメなんて観て…問題
②    男なのにこんなの観て…問題
③    ひとりで観ればいいのに…問題
正確には、「あの場で僕の心にくすぶっている問題」は、この三つがありました。

もちろん、ぼく自身の「考え」としては、そんなこと一切思いません。
自分自身、大好きですから。

ですがそんな風に、母という名の世間との接地面に少しばかりかすめるとき、どうしてもこうした他者目線が僕の身に侵入してくるのです。
まだ固まった自分の芯もなく、いまにも溶けてなくなりそうな当時の僕は、そういったことで簡単に流されてしまうのでした。

 

あまりにも寂しすぎる。同じ趣味の人がほしい。一緒に観て楽しんでくれる人がいてほしい。
でも怖い。そんな人いやしない。認めてほしい。
何食わぬ顔でアニメを見ていましたが、そこに僕はいろんな意味を乗せていたんだなあと回想します。

母は、一緒にそこに居てくれました。
作品を好きになったり、ファンになったりはしません。
ただ、テレビの前に一緒にいてくれて、面白いシーンではたまに笑って、黙って観てくれたのです。

 

〇安全基地

 

ここには、いろんな意味で大切なことがある気がしています。
①    自分を承認して貰えた喜び
②    自分が安心安全を感じられる範囲が拡張されたこと

人によって他にもあるかもしれませんが、大きくはここでしょう。
まず、他にどこにもなかったものを得られた喜びはあったと思います。
この出来事はずばり、自分を認めてくれたことそのものでした。

ほんとは、母も嫌だったかもしれません。いろいろな意味で。
しかしそれでもなお、そこに居てくれた。
それだけで、わたしは「ほっ」としたのを覚えています。
あ、大丈夫なんだこういう自分を出して、と。

 

それはそのまま、2で書いた「拡張」される体験ともなります。
つまり、自分の部屋の中で成立していた安心が、リビングにも広がった、ということです。

自分を出せる範囲が、生きてそこに安心していられる場所が、著しく狭まってしまう現象が、ひきこもりであるとも言えると思います。
多くは、そこから脱したくても、なかなか広げることが出来ない。

しかしわたしは、本当に運がいいことに、拡張することを母が「放っておいて」くれましたスクリーンショット 2025-06-30 162302.png
あるいは、そうしてもいいかな、そうしたいな、と僕に自然に思わせてくれるような接し方を普段からしてくれました
当時は意識していませんでしたが、わたしにとっての「安全基地」が出来たのは、これがきっかけだったような気がします。

 


ひきこもりを脱するきっかけ、という話になると、本当に多くの話があるでしょう。
これは、些細な、しかし本当に大事なきっかけのひとつでした。

いま自分がこうして出かけたり外で楽しめる、活動範囲を広げていけるのは、ここで土台を得られたおかげでもあった様に思います。
まったく自覚は無かったけれど、実際いまではこうして元気に働いて、外で趣味の合う友人たちを作ってもいけたのだから、本当にそうなんだと思うのです。

 

〇さいごに

 

もしこれを読んでいる親御さんや関係の方がいたら、とても嬉しく思います!

①    話せる関係性であること
②    もし当事者が楽しんだり大事にしたりしていることを見せてくれたら、「そこに居る」こと。同じレベルで好きになる必要も、無理する必要もないけれど、「自然な自分の反応」をみせること。何かあったことには、「反応」すること。

今回のエピソードで重要だったな、嬉しかったなと個人的に思うポイントです。
もちろん、1も2も、簡単にはいかない事だとは思います。
それに状況も人も違いますから、僕と同じように効果的だとは言えないかもしれません。
しかし、もし参考になったり、力になる部分があったら、本当に書いてよかったと思います!

ありがとうございました。それでは、また来月。

 

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