経験専門家の成長日誌「あしあと」#24「台所の話」
経験専門家の「あしあと」~墨田区ひきこもりコラム#24「台所の話」
目次
1.別の切り口から…(続)
2.解放
3.家族問題…新たな疑問
4.最後に
〇別の切り口から…(続き)
今回は、親子問題第三弾。
親子の「離れる時間」について、続きを書きたいと思います。
親子の距離感は、もしかしたら多くの人にとっても難しい問題かもしれません。
ただ、ひきこもり当事者や家族にとっては、特に難しいんじゃないかと思います。
なかなか適切な仕方で「離れる」 「自分を持つ」というのが大変な場合がどうしても多い。どうしても接近しすぎたり、抑圧が起きたり、逆に見放されてしまったりすることが多いと思います。
その難しさと大切さについて語ったのが前回でしたが、改めて、別の切り口から考えたいと思います。
すなわち、「台所」の話。
親から離れ、自分だけの時間・場所・生きる術を得るということについての話です。
大袈裟にも見えるかもしれません。私自身、当時はそこまで考えてもいませんでした。
しかし今から思えば、「台所で1人過ごす」あの時間は、大切なものでした。
一旦(わたしの)親子についてのコラムは今回で離れたいと思っているので、区切りにはなりますが。
改めて、よろしくお願いします!
ひきこもり当時、私の家は母との二人暮らし。
週2で仕事に出ていて、夜はご飯が作って置いてあるような環境でした。
そんな日々の中でいつだったか出てきたのが、「仕事の日は、晩御飯作っといてくれない?」という母の提案でした。
罪悪感もあってか、力になりたい気持ちもあってか、快くOKしたのを覚えています。
そもそも料理ができない身ではありましたが、今から思えば、本当に良い機会でした。
というのも。
あの時、あの場所で、私はすごく「解放」されていたのです。
誰もいない家で。
自分だけがいる台所で。
爆音で好きな音楽やラジオを流しながら。
レシピを見ながら、自分のペースで料理をしていました。
まさに、それまでのひきこもり生活にはなかった時間。
あの時私は、期せずして「自分だけで自由にできる場所」を手に入れたのでした。
例えるなら、温泉旅行に行って、朝浴場にいたら自分以外に誰もいない!」みたいな。
あの思いがけない開放的な瞬間が、近いかもしれません。
ちょっとテンション上がって、歌でも歌ってしまいそうなというか。
ここで良かったところは、いくつかあると思います。
①好きなものを堪能できる場所、ささやかな楽しみになる
②生活能力の向上、できることが増える
③人に感謝され、無力感から離れていけた
④家のなかでの、「自分だけの領域」を拡張することができた
やったことが形を伴って、確かにそこにある。
黙々と手を動かし、考え事や雑念から離れられる。
料理にはそういう意味でも喜びがあったし、やって良かったなと回想します。
続けていく中で、料理のレパートリーを増やせたし、最低限自分は動けている、というある種の「セルフ支え」にもなっていました。
また、地味に「時間管理」の点でも意義があったと思います。
料理を作るタイミングが決まっていた分、昼夜逆転の激しかった私を最後の部分で食い止めていたのは、この料理の時間だったからです。
他の日で時間が崩れても、ここで変えることが出来ていたのです。
大きなきっかけにはならずとも、私がその後動いていける土台の、その大事な一翼ではなかったかと、そう思う訳ですね。
…何より、シンプルに、あの時間が私は好きでした。
そういう楽しみな時間、場所を得られたというただそれだけで、とても意義深かったなと思うのです。
〇親子問題…新たな疑問
そういう意味で、もちろん、「料理だからこそ良い、やるべき」というつもりはありません。
私自身の生活、親との関係性にそれがたまたまピッタリだっただけで、内容が違えば、上手くいかなかったでしょう。
それぞれの家庭・当事者に合う内容はあると思います。
これがもし仲の悪い父親に同じことを言われていたら…全く違う効果を持っていたのではないか?と想像します。
(では、どんな風だったら父と関係を作り直しうるか?
どんなことだったら、父親にされても嫌ではないか?
これはまたいつか考えたいと思います)
(もしかしたら、親子問題を考える上でより切実さのあるテーマかもしれませんね)
そもそも、私は何から解放されていたのでしょうか。開放感の前提には何があったのでしょうか。
これらのエピソードを、単に私個人の話に片づけず、他の方に応用できる捉え方にはできないか?「こうすればよくなる」という方法論とは違った仕方で。
新たな疑問が出てきました。
〇最後に
親子の話について、もとい私の具体的なエピソードについて、ここ数回に渡ってコラムを書いてきました。
その分、ご自身やご家族と照らし合わせて考えやすい部分もあったかもしれません。
しかしその分、方法論のように読まれてしまうような気がしなくもありません。
実際、私自身の話をするコラムがある以上、他の内容・角度があってもいいよな…と感じてきたところで。
次回以降は、少し趣向を変えて書いていこうかなと思います。
乞うご期待ください。
それでは、今月もどうもありがとうございました。
さようなら~。
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