経験専門家の成長日誌「あしあと」#25「自分軸について」
経験専門家の「あしあと」~墨田区ひきこもりコラム#25「自分軸について」
目次
1.気になる言葉
2.ひきこもり支援と「自分軸」
3.自分軸と「世間軸」
4.私にとって大切なこと(最後に)
〇気になる言葉
ひきこもりのご家族とお話ししていて、あるいは支援の現場に入っていて、常々思い出される言葉があります。
「自分軸」という言葉です。
ひきこもり当時の自分に刺さる言葉でもあり、支援員として着目したい考え方でもあります。
なんとなく意味は伝わる、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、この言葉について改めてお伝えしたいと思います。
ここ数回、親子問題や私自身の過去の話を中心にお話ししてきました。
が、一旦、また違う方向の話をしたくなりました。
ひきこもりに関わるワードについて、知識をお伝えしつつ、改めてじっくり考えたいのです。
ひきこもりや支援することについてでもあり、読む方々それぞれの立場に関わる話でもあると思います。
それでは、いきましょう!
〇ひきこもり支援と「自分軸」
ひきこもり当事者、その家族、支援者。
いろんな方向で自分軸というのは言えると思いますが、中でも特に、当事者にとってこれは切実です。
というのも、自分の感覚や価値観で生きることがままならず、自分が固まらぬまま「溶けて」いってしまうような状態が、まさにひきこもりという現象だからです。
これは私自身の経験から感じる感覚なので、もちろん、人によって表現の仕方は変わるでしょう。
ただ、様々なひきこもり事例に、自分軸という考え方が関わっているということは、言えるのではないかと思います。
そしてここに関わるのが、前回まで続けてお話ししてきた「家族問題」です。
多くのひきこもりの当事者において、家族との歴史の中で自分軸が弱くなってしまった、ということが言えるのです。
だからこそ、一筋縄ではいかない。
家族によって、本人によって、その辿った道のりが全く異なるからです。
ひきこもり支援では、まさにこの自分軸を取り戻していくことを(本人の家族とともに)目指していきます。
〇自分軸と「世間軸」
もちろん、これはひきこもりに限らず、みんなに関わることだとも思います。
自分で選べないこと。
なんでもいいです。
お昼ご飯だっていい、観る映画だっていい。
学校だって、仕事だっていい。
生き方だっていい。
他人や世間に言われることに則って。
自分の感覚や価値観がどう言っているか、よくわからない。うまくいかない。
そんな方は、意外に多いのではないでしょうか。
ただ、中でもひきこもりの場合。
どうしても、日々を自分軸で生きることは難しい。
無理もないことです。
自分の送る日々それ自体が、「他人や世間に望まれていない」、とどうしても感じざるを得ないことが多いのですから。
ここに、自分軸で生きられない苦しさが、端的な形で出ていると思います。
負い目を感じる。
世間や家族に合わせるためにどうすればいいか、と考えて仕事や生き方を考え、悩む。
しかし、それをやればやるほど、かえって自分が見えなくなる。
自分がそもそもどんな日を送りたいのか、気持ちや感覚すらも分からなくなっていく。
焦る毎日のなかで、自分軸がなくなっていくのです。
むしろ、「世間軸」のような感覚で生きることにならざるを得ない、という言い方が、ひきこもりには出来るかもしれません。
本人たちは、どう生きるかと必死になっている。
そんな日々の只中にありつつも、同時に自分軸を持ち直そうとする…これは、本当に難しいと思います。
ここをどう支援するか…その複雑さが伝わるのではないでしょうか。
〇私にとって大切なこと(最後に)
少し固い書き方になってしまいましたが…いかがでしたか。
とにかく、ひきこもりと自分軸について、考え整理してみました。
特に後半、いかにひきこもりの渦中に自分軸のままで生きるのが難しいか、ということが、私にとって重要だったかなと読み返すと思います。
というのも、私自身、ひきこもり時、その点で後悔しているからです。
もっと休み切ればよかった。
したいことは、その日・その場でさくっとでもしとけばよかった。
中途半端に将来のことばかり考えていた。
自分軸で生き切ったその日々は、時が経って当時を思い出した時に、少なくとも、思い出にはなり得たのではないか。
これら全部、とても出来る状況でも、体力でも気力でもなかったのは、重々承知です。
後になったから言えることです。
どうしていても、後悔はするでしょう。
ただ、自分軸が作り切れなかったというこの気持ちは、大事にしたいなと思います。
今後の自分の生き方はもちろん、支援員として支援にあたる時もそうです。
自分軸を作っていくことを大切にしたい、というこの観点は、ただ重要というだけでない何か切実さが私の中にあるのです。
最後まで、ありがとうございました。
ではまた。
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