経験専門家の成長日誌「あしあと」#27「経験専門家と家族会」
経験専門家の「あしあと」~墨田区ひきこもりコラム#27「経験専門家と家族会」

目次
1.はじめに
2.経験専門家について
3.家族会の一幕(その意義)
4.まとめ
〇はじめに
今日は、経験専門家ということについて書きたいと思います。
これまで何度かコラムにも登場した経験専門家ですが、これはそもそも一体どういうものなのか。
ひきこもり支援、特に家族会において、私含めた経験専門家は活動していますが、一体どんなことをするのか。
(そう、はっきりお伝えしていなかったかもしれませんが、私は「経験専門家」として従事しています)
その意義はどこにあるのか。
後半は、もう1人の経験専門家、元コラム担当のoさんのお話も出しながら、考えたいと思います。
よろしくお願いします。
〇経験専門家について
ひきこもり家族会に参加された方は分かるかと思いますが、墨田区ひきこもり相談窓口(すみ家)にて実施している会では、経験専門家が参加しています。
その役割は、「ひきこもり経験をした立場から当事者の気持ちや考えを伝えたり、当時の自分の体験を共有すること」「当事者とご家族の通訳となること」。
言い方はいろいろあるでしょうが、とにかく、当事者としてその人しか持ってない経験を武器に参加しているのです。
家族会ですから、もちろんご家族の方が、それぞれに悩みを共有することもします。
心理師や福祉専門職の方が、その専門的な立場からお話をしたりもします。
そしてそれと同列で、ひきこもり経験を抱えた経験専門家が、自身の経験から話をするのです。
重要なのは、それらが雑多に混ざり合って、多様な声として同居している、ということ。
支援者的な言葉が正解なわけでもなく、もちろんひきこもり当事者の言葉が絶対正しい、ということでもなく。
言うまでもなく、こちら側から「こうしなさい」と指示・指定するものでもなく。
参加されるご家族それぞれが、多様な声や考えの中から、自由に学びや発見を持ち帰っていく、という仕方が、家族会のスタイルなのです。
〇家族会の一幕(その意義)
経験専門家について、家族会の自由さについて、一つお話しがあります。
最近、家族会にて元担当のoさんと共演をしました。
その際、「ひきこもり当事者が料理をした時」という話になりました。
親はそれにどう反応するものだろう、という話ですね。
面白いのが、ここで2人の経験専門家がいて、しかも、2人とも意見が微妙に違ったということ。
私は、「本当に美味しいと感じた時にそのおいしさを伝えてくれれば」と話しました。
一方oさんは、「作ったときはその都度ありがとうと言ってもらえると嬉しく感じる」という意見でした。
これ、もちろんどちらかが良い、というものではありません。
ひきこもり当事者も、そのご家族も、家族の持つ文化や歴史も、すべて違います。
こうするといいよ、と家族会の全ての参加者に指定することは難しい。
しかし、だからこそ、このようにいろいろな意見が共存していることに、意味があるのです。
この場に2人いたからこそ、いらっしゃったご家族にとってより豊かな場になることができたのではないか、と思うのです。
家族会に参加された方それぞれが、自分の家、自分の子供だったらどうだろう、と考えたり、試してみたりする余地があるからです。
経験した当事者の語ることですから、自然と親御さんも興味を持ってくださったり、反応が良かったりする、それは嬉しいことです。
今後とも出来る限りの仕方で、私の経験を力にできたらと思います。
〇まとめ
これまで長いコラムが多かったこともあって、今回は経験専門家について、短めにお話ししてみました。
いかかでしょうか。
家族会における多様性(正解がないこと)の意味についての話にもなりましたが、まさにそのためには、経験専門家の存在も(支援者と同様に)重要なのではないかと思います。
家族会や支援者といったものと並べて、改めてそのイメージが伝わっていれば幸いです。
それでは、また来月。
ありがとうございました、さようなら。